今日の音盤 2007/12/31

画像今日の音盤。

John Wesley Harding / The Confessions Of St. Ace (2000)

England出身で、現在はUSに在住のシンガー・ソングライターの8作目でしょうか。本名はWesley Stace。芸名のJohn Wesley HardingはBob Dylanの例のアルバムから付けたのかと思っていましたが、調べてみると、それだけではなさそうな(実際のとこは分かりません)。これまでリリースされた主要なアルバムは以下の通り。

① It Happened One Night (1988)
② Here Comes The Groom (1989)
③ The Name Above The Title (1991)
④ Why We Fight (1992)
⑤ John Wesley Harding's New Deal (1996)
⑥ Awake (1998)
⑦ Trad Arr Jones (1999)
⑧ The Confessions Of St. Ace (2000)
⑨ Adam's Apple (2004)

①はデビュー作ながら、異例のライヴ盤でもあり、②を実質的なデビュー作とする人もありそう。②~④はメジャー・レーベルのSireからのリリース作品。この後、しばらく作品が途切れますが、①もリリースしていたRhinoの傘下のForwardというレーベルに移って、⑤で復帰。その後も長く共演関係が続くChris von Sneidernを共同プロデューサーに迎えた⑤は会心と言える出来で、それまでのElvis Costelloと比較されがちだった音楽性から離れ、独自のスタイルを感じさせるものになっており、彼にとって分岐点となった作品なんじゃないでしょうか。

その後も良質のアルバムを届けてくれていますが、その中で異色の存在なのが⑦。UKのフォーク・シンガーのNic Jonesによるアレンジを基にしたトラッド曲を集めたアルバム。他の作品ではUK的な要素は部分的に感じる程度かなと以前は思っていたけれど、こういう作品を聴くと、その辺りの感想も怪しくなります。色々と聴けば聴くほど、分からない事が増えてくるもんです。これがKurt Bloch(FastbacksやYFF)によるプロデュースなのも驚き。

以上の主要アルバムの他に、EP、Dynablobシリーズ、コンピ盤、The Love Hall Tryst名義でのアルバムなどもあり、私も聴いていないのがあります。そう言えば、The Love Hall Trystの作品を基にしたライヴを収録したDVDも出ていますね。そんな数多くの作品の中で一番好きなのが今日の音盤の⑧、"The Confessions Of St. Ace"です。St. Aceに関するアルバムのようで、ブックレットに文章が載っていますが、以前に軽く読んだ限りでは、あまり良く分からず。すんません・・・

1曲目"Humble Bee"は鍵盤による軽快なイントロで始まるポップ・チューン。彼のポップ・センスが明快な形で表現された曲でしょうね。以前にも紹介しましたが、この曲はYouTubeに画像があります。名曲ですね。ライヴでも披露してくれました。2曲目"She's A Piece Of Work"は程良いテンポで、程良くポップで、程良く歌を聴かせてくれます。褒め言葉には困るけど、欠点も見つからない・・・っていう感じか。

3曲目"People Love To Watch You Die"。穏やかではないタイトル。⑤には、"Other People's Failure"という曲もありました。人の心に存在しうるダークな部分を冷静に見つめた曲という感じでしょうか。4曲目"I'm Wrong About Everything"はR&Bあるいはゴスペルを意識した音作りでしょうか。親しみやすいメロディでもあり、かなり良い感じ。彼のヴォーカルが映えます。

5曲目"Same Piece Of Air"が最も好きな曲かな。なだらかな起伏を描くメロディがとても心地良い。歌わずにはいられない。名曲です。6曲目"Old Girlfriend"は静かに曲が展開、サビに向かって動きを増し、サビ部分は気持ち良く盛り上がる。バンド・セットのライヴで聴いてみたいとこ。

7曲目"Bad Dream Baby"には、Jimmie Dale Gilmoreがヴォーカルで参加しています。本作中では最もヘヴィな曲で、ややラウドな音の中、Gilmore氏の独特の声がサビ部分で響きます。良い。8曲目"Goth Girl"もちょっとヘヴィな曲ですね。まずまず。

9曲目"You In Spite Of Yourself"はパワー・ポップと言って良さそうかな。気分をアップにさせてくれるだけのパワーを秘めているし、こんな曲をもう少しやってくれても良いのになと思ったりも。約2分半で潔く終わり、飢餓感を煽ります(まあ、もっと聴きたいと思わせる訳です)。10曲目"Our Lady Of The Highways"には、Steve Earleがヴォーカルとマンドリンで参加。相変わらずの存在感を感じさせる歌声を披露しています。2人の個性が溶け合うような仕上がりで、かなり良い。ライヴでも歌ってくれました。

11曲目"After The Fact"は少し地味な感じもするけど、じわりと沁みるメロディが堪らなく良い。12曲目"Too Much Into Nothing"は以前から知っていたかのように思えるぐらいに心にすんなりとなじむメロディで、温かさを感じさせるヴォーカルと相まって、格別の響きで最後を飾ります。素晴らしい。

思い起こせば、今年最初に聴いたアルバムがこれでした。そうしたら・・・っていう訳じゃないけど、久々の来日が実現して、ライヴを見る事もできました(2008年の初聴きにも力が入ります)。少しだけど言葉も交わせたし、サインもしてもらいました。例によって、私の名前をミススペルしてくれたりも(JWHよ、お前もか・・・)。数多くのシンガー・ソングライターが存在する中、彼のヴォーカルは特に好きな声でもあり、曲の良さだけでなく、声の素晴らしさにも改めて惹かれたライヴでした。当たり前かも知れないけど、ギターもうまかったし。やはり、弾き語りというスタイルにはマジックがあるなぁ・・・と実感。

来日の頃には、小説『ミスフォーチュン』の日本語訳も発売され、多才さを見せてくれています。実はまだ読んでいないので、詳しい内容までは分からないんだけど。早く読んでみないと。大学では英文学専攻だったはずで、その辺りの素養は歌詞にも反映されているはずだけど、自分がきちんと理解できているのかは怪しいところ。歌詞も魅力の一部でしょうけど、それを抜きにしても楽しめるんじゃないかと思っています。

その辺りの知的なイメージがあるせいなのかどうかは分からないけど、難解な印象を与えているのか、どうも日本での認知度は高くないように感じます。実際には何度か聴けば一緒に口ずさめそうな曲が多いし、タイプは違いますが、上記のChris von Sneidernと仲が良いのも納得のポップ・センスの持ち主だと思う。フォークを基本に、冷静な視線で描かれる曲に彼の温かみのある声が乗っかり、独特の音空間を作ります。これからも素晴らしいアルバムを届けてくれるはず。

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