今日の音盤 2007/02/10
今日の音盤。Lucinda Williams / Car Wheels On A Gravel Road (1998)
Louisiana州Lake Charles出身のシンガー・ソングライターの5作目。グラミー賞受賞作品でもあります。デビューは1978年で、この5作目は前作の"Sweet Old World"から6年ぶりの作品ですね。色々と事情があったにせよ、20年目にして5作目だから、やはり寡作であったと言えるでしょう。近年は3年に1作ぐらいのリリースになっており、安定した活動を続けているような印象を受けます。
このアルバムをレヴューするタイミングを窺ってきましたが、その時が来たようです。新作がリリースされ、彼女の長年の音楽パートナーだったGurf Morlixの奇跡の来日も実現ですから。まず書いておきますが、これは名盤中の名盤です。これよりも好きなアルバムは何枚かあるものの、これほどの豊潤な音楽性を秘めたアルバムを私は他に知りません。Steve Earleの"Transcendental Blues"と共に、私をルーツ・ロック系を聴く方向へシフトさせたアルバムですね。今になって振り返ってみると、結局、この2枚を超えるようなルーツ・ロック作品には出会っていないんですよね。もちろん、それは私の中での評価ではありますが。
ルーツ・ロックと書きましたが、この辺りの音を指す場合に使いたい言葉はアメリカーナ(Americana)ですね。ロック、フォーク、カントリー、ブルーズ、R&Bなどがそれぞれの感性でブレンドされた音楽。深く語れるほど色々と聴いたとまでは言えないけど、それなりに聴いてきた身から言うと、上述の音楽要素は明快な境界とかがある訳ではなく、かの地では身近で普通に接する音楽として存在しているんだろうなと。当たり前の事のように思えるけど、実際に自分の耳を通してそのように感じられるまでには少々時間を要しました。
その一方で、それぞれのジャンルにおける核と言える要素があるのも事実なんだと思ったりも。う~ん、結局は分からない事だらけで、話をまとめられないのであります。まあ、だからこそ音楽を聴き続けているんだと思うし、聴き続ける事で見えなかった地平が見えてくるのでしょう。これまでもそうでした。
さて、Lucinda Williamsです。1978年にデビューし、1980年には2作目をリリースしています。この頃の音は最近になって聴いたのですが、カントリーやブルーズの要素を盛り込んだフォーク系のSSWっていう印象。デビュー作はトラッド・ソングも含めてカヴァー曲が多いのですが、オリジナル作品の出来も遜色ない出来で、後の姿を予感させるだけのものがありますね。2作目は全曲が自作で、まだ線の細さとかがあるにしても、すでにスタイルを確立しているように感じられます。
そして、時は流れ、1988年に3作目をリリース。Lucinda Williams、Gurf Morlix(祝来日!)、John Ciambotti、Donald Lindleyの4人によるThe Lucinda Williams Bandとブックレットに紹介されている通り、固定バンドでの作品となっており、作品の一体感や深みがアップ。Lucinda本人の成長も大きいのは当然ですが、プロデュースも務めたバンドのリーダー的存在のGurfによる部分も大きかったはず。このアルバムのオリジナル・リリースはRough Tradeレーベルだったんですよね。
1992年の4作目もほぼ同じメンバーでの制作。Elektra傘下のChameleonレーベルへの移籍。それも手伝ってか、ややコンテンポラリーな方向へシフト。曲の出来も本当に粒揃いで、とても親しみ易いアルバムになっています。以前にも書きましたが、最初に聴くならこれが良いかな。円熟へと向かう前の成熟した姿が眩しい傑作。
そして、1998年の5作目"Car Wheels On A Gravel Road"となります。完成するまでにかなりの紆余曲折があったようですが、断片的にしか知らないので、ここでは割愛。ただ、Gurf Morlixらのバンド・メンバーとは本作を最後に袂を分かつ事になってしまいました(謝辞の言葉が何とも・・・)。ベーシック・トラックのプロデュースはSteve EarleやRay KennedyによるThe Twangtrustが担当、最終的な制作はRoy Bittan(The E Street Bandの鍵盤奏者)が行ったようです。Lucinda本人も共同プロデューサーとしてクレジットされていますね。
Rick RubinやJim Scottがミックスを担当、豪華な面々です。参加ミュージシャンもすごくて、Gurfらのバンドに加え、Steve Earle、Buddy Miller、Roy Bittan、Greg Leisz、Charlie Sexton、Jim Lauderdale、Emmylou Harris、Bo Ramseyなどなど。本当に素晴らしい演奏を披露しています。さて、長くなったので、この辺で各曲の話に。
1曲目"Right In Time"はアメリカの少し乾いた風を感じるような曲で、目を閉じると広大な土地が目に浮かぶよう。曲も演奏もとてもナチュラルな響き。素晴らしい。2曲目"Car Wheels On A Gravel Road"も大陸的な大らかさが伝わってきます。貫禄。3曲目"2 Kool 2 Be 4-Gotten"はタイトルがPrinceみたい。淡々とした中に何かが見えてくるのです。
4曲目"Drunken Angel"は粘っこいヴォーカルが心に絡みつきます。素面では聴きたくない曲だけど、今日は素面で聴いています(だから、全体の文章も冷静なトーンのはず)。5曲目"Concrete And Barbed Wire"はアメリカーナど真ん中と言えそうな曲。ラフな質感が堪りませんな。やはり何か飲みたい。6曲目"Lake Charles"は彼女の生まれ故郷をタイトルに冠したスロウ・チューン。これも情景が思い浮かぶような名曲ですね。
7曲目"Can't Let Go"のみカヴァー曲。少し前に来日していたRandy Weeksの曲(セルフ・ヴァージョンは彼の2000年のデビュー作で聴けます)。かっこいいなぁ。8曲目"I Lost It"はLucindaの伸びやかなヴォーカルが何とも素晴らしい。9曲目"Metal Firecracker"は最もポップな曲かな。最初に好きになったのがこれでした。最高。この曲もそうなのだけど、失恋を歌った曲が少なくないのです。どんな切り口で表現しているのかに注目といったところでしょうか。
10曲目"Greenville"では、Emmylou Harrisがハーモニー・ヴォーカルで参加、印象的な声を披露しています(彼女はLucindaの"Sweet Old World"をカヴァーしていましたね)。彼女の書く歌詞は同じようなフレーズを繰り返す事がよくあるのだけど、この曲もそうですね。曲の良さや声の力もあって、歌詞も説得力を持って響きます。11曲目"Still I Long For Your Kiss"は抑えた熱さとでも言えそうか。ストレートかつシンプルな歌詞だけど、彼女が歌えば一味違います。
12曲目"Joy"はとにかく聴いてみるべし。言葉では説明できない。ライヴで聴きたい! 13曲目"Jackson"は名盤の最後に相応しい、究極とも言える名曲ですね。深く豊かな演奏、優しく寄り添うハーモニー・ヴォーカルなど、どれもが最高。素晴らしい小説を読み終えた時のような余韻を聴く者の心に残し、幕を閉じます。
筆舌に尽くしがたいとは、このアルバムの事か。自分の文才のなさが悲しくなります。歴史的名盤にして、心の名盤。いつまでも聴き続けます。いつかライヴを体験できると信じて。
さて、いよいよリリースの新作ですが、まだ聴けてません。仕方ないので、旧譜を聴きまくり。やはり素晴らしいですね。彼女の作品を未聴の人には是非とも聴いてもらいたいし、アメリカーナ作品にも多く触れて欲しいですね。最後に、彼女のアルバム・ディスコグラフィを。
Ramblin' (1978) (リリース当時のタイトルは"Ramblin' On My Mind"?)
Happy Woman Blues (1980)
Lucinda Williams (1988)
Sweet Old World (1992)
Car Wheels On A Gravel Road (1998)
Essence (2001)
World Without Tears (2003)
Live @ The Fillmore (2005)
West (2007)
この記事へのコメント
Lucinda Williams、有名どころのアルバムはあるんですが全てをフォローしきれてません・・・
また先日発売された新作も今日CDショップに行ったにもかかわらず、すっかり忘れてしまい未購入です・・・今、大反省しているところです。苦笑
本作はグラミー受賞作ということですが、グラミーと言えば遂にやりましたねぇ、Dixie Chicks!まさか独占するとは思ってもみませんでした。これはいよいよ来日も見えてきたんじゃないでしょうか?単独は無理でもフェスくらいは・・・でも何故かサマソニではなくフジロックで歌ってる姿が目に浮かんで仕方ないです。笑
私も初期の作品を買ったのは去年でしたから。
賞味期限のある音じゃないのだし。
例によって、新作もUSのショップで買うつもりなので、私が聴くのは3月になってしまうかも・・・
Dixie Chicksの受賞は本当に良かったですねぇ。
確かに、これで来日に近づいたのかも知れませんね。
サマソニよりもFRFっぽいのは、言われてみれば、かなり納得ですね・・・
自然に囲まれて聴く彼女達のライヴは最高だろうなぁ。